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注意!サービス付き高齢者向け住宅の囲い込み

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増加する利用者の囲い込み

2011年10月、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)の改正に伴い施行された、サービス付き高齢者向け住宅ですが、施行から11年経った今、サービス付き高齢者向け住宅の在り方が大きく変わってきています。

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢の単身者や夫婦世帯が介護が必要になったら外部の事業所を契約を結び、それぞれの事業者から介護サービスを受けながら、安心して生活できる住まいとしてスタートしました。

サービス付き高齢者向け住宅選びの注意点でもお伝えしましたが、スタート当初は入居時の条件は「自立」というサービス付き高齢者向け住宅がほとんどでした。

サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリーで管理人さんが日中常駐している賃貸マンションのはずでしたが、数年前から、サービス付き高齢者向け住宅の実態が変化しています。

最近では、入居時自立の方が入居できるサービス付き高齢者向け住宅が少ないのが実状です。

私にしてみれば、高齢者向けの賃貸住宅なのに自立の人が入居できないなんて、変じゃないかと、不思議で仕方ありません。

先日も、ご夫婦が同室で入居できるサービス付き高齢者向け住宅を探してほしいとのご相談がありました。

このご夫婦は、お二人とも自立です。残念ながらご夫婦がご希望の地域には、夫婦部屋があるサービス付き高齢者向け住宅の数が少ないため、空室はありませんでした。

どちらか片方が要介護ではないと、ご夫婦で一緒にご入居はできないという条件があるホームもありました。

もう、スタート当初のサービス付き高齢者向け住宅はなくなってしまったのかしら?と思ったほどです。

ちなみに、高級と言われる月額利用料がびっくりするほど高いサービス付き高齢者向け住宅であれば、自立の方を受け入れてくれるところはあります。

そして最近問題になっているのが、安い家賃で入居者を集めて、サービス付き高齢者向け住宅に併設している自社のサービスを利用させるというシステムです。

家賃以外に介護報酬でも利益を得る入居者の囲い込みや、過剰な介護保険サービスの提供をしている事業所が、問題になっています。

サービス付き高齢者向け住宅の増加理由

スタート当初は、ハウスメーカーや建築会社などがこぞってサービス付き高齢者向け住宅を建てました。

しかし、自立している高齢者が、住み慣れた地域や今までのコミュニティを手放してまで、サービス付き高齢者向け住宅に転居する人がいなかったので、入居は思うように進まず、「建てたはいいけど入居者がいない」というサービス付き高齢者向け住宅がたくさんありました。

中にはあまりにも入居者が集まらず、社員寮に転換してしまったところもあるほどです。

そこで、国土交通省はサービス付き高齢者向け住宅を普及させようと補助金制度を導入しました。
新築の場合には建築費の最大10分の1の補助金を受けることができますし、補助金制度以外にも固定資産税や不動産取得税に関して、税制優遇を受けることが可能です。

これらのことが追い風になり、右肩上がりに増えたサービス付き高齢者向け住宅の登録件数は、2020年2月末で7,587件(254,127戸)となりました。

ここ数年、私が住む地域でもすごい勢いでサービス付き高齢者向け住宅が開設されています。

その多くが低家賃をうたい、家賃・管理費・水光熱費・食費で約11万円(介護保険自己負担分、医療費は別)と、格安のサービス付き高齢者向け住宅もあるほどです。

囲い込みとは

サービス付き高齢者向け住宅は、本来、介護が必要になったら外部の事業所を契約を結び、それぞれの事業者から介護サービスを受けながら生活する住まいです。

現在のように、同一建物内に居宅支援事業所・訪問介護・デイサービスなどが、併設しているところは少なかったと記憶しています。

しかし、最近ではサービス付き高齢者向け住宅に入居したら、併設している自社の居宅支援事業所と契約し、自社の訪問介護を利用し、自社のデイサービスに通わせるというシステムで、家賃以外に介護報酬でも利益を得ているところが増えています。

このシステムが入居者の囲い込みとして問題になっているのです。

私が体験した事例を紹介します。

Aさんは、一人で生活をすることに不安になったため、月々の利用料が年金内で収まるサービス付き高齢者向け住宅を探していました。

現在のお住いの近くにオープン予定のサービス付き高齢者向け住宅があり、私も一緒に見学に行くことにしました。

介護保険の自己負担金を入れても年金で支払える金額でしたが、私からしたら有り得ないような条件があったのです。

その条件とは「同じ運営会社が運営しているデイサービスに通うこと」でした。
Aさんは、現在デイサービスに通っていて、仲の良いお友達が何人もいらっしゃいます。

併設しているデイサービスに通うには、現在利用しているデイサービスの利用をやめなければなりません。

居宅支援事業所も同様に、同じ運営会社が運営している事業所へ変更することが条件だというのです。

つまり、私達のサービス付き高齢者向け住宅に入居したければ、併設のサービスを利用しないと入居できないよということで、これが囲い込みです。

介護保険のサービスは、介護を必要とする人が必要なサービスを自由に選択できる制度のはずですが、このサービス付き高齢者向け住宅に入居するためには、必要なサービスを自由に選択できないとのです。

もちろんAさんは、このサービス付き高齢者向け住宅に入居をしませんでした。

理由は、通っているデイサービスに通いたいからです。

過剰な介護保険サービスの提供

本来、サービス付き高齢者向け住宅は、住まいと介護サービスがそれぞれ独立していて、介護が必要になったら外部の事業所を契約を結び、それぞれの事業者から介護サービスを受けながら生活する賃貸住宅で施設ではありません。

自分が利用したい、利用したほうが良い介護サービスはケアマネジャーと相談しながら決めて、行くことが本来の姿だと思っています。しかし、現状はどうなのでしょうか。

安い家賃で入居者を集め、自社で運営する介護保険のサービスを利用させる囲い込みのようなシステムのサービス付き高齢者向け住宅では、本来必要ではない介護サービスまでケアプランに入れるようケアマネジャーに促し、入居者が持っている介護保険の利用限度額をすべて使い、介護保険の報酬で利益を過度に得ているサービス付き高齢者向け住宅もあるのです。

厚生労働省からも警告が

厚生労働省は、支給限度額いっぱいに介護サービスを提供するケアプランについての警告を自治体に発しています。

社会保障審議会介護給費分科会では、サービス付き高齢者向け住宅で悪質な囲い込みが目立つと摘してます。

そこで、厚生労働省は新しいケアプランの点検制度を打ち出しました。

対象となるのは2021年10月1日以降に作成されたケアプランで、3ヶ月毎にチェックを行うという制度です。

3ヶ月分のケアプランを、各都道府県国民健康保険団体連合会がチェックして、市区町村に結果を伝えます。

点検が必要とされた居宅支援事業所は、地域ケア会議などで説明しなければならなくなり、実施した自治体には300万円の補助金が出るそうです。

また、悪質な囲い込みが行われていると思われるサービス付き高齢者向け住宅へは、自治体の立ち入り調査や指導につなげるとしています。

サービス付き高齢者向け住宅を選ぶポイント

本来、サービス付き高齢者向け住宅は、外出や外泊も自由で、お部屋に家族や友人を呼んでお食事やお茶会をすることもできます。なぜなら、高齢者のための賃貸住宅だからです。

介護付有料老人ホームや特別養護老人ホームでは、自由に外出や外泊はできません(事前に申し出て施設が許可をすれば可能)。ただし、コロナ禍の現在では施設により対応が異なっています。

本人のライフスタイルに合わせた、生活ができることがサービス付き高齢者向け住宅の魅力です。

ご自身に合ったサービス付き高齢者向け住宅に入居するためには、以下のことに注意して選んでみてはいかがでしょうか?

  • 一か月に必要な費用を明確にしてもらう
  • 自立でも入居できるか?
  • 入居する前に利用していた介護サービスを継続できるか?
    ※ケアマネージャーやデイサービス、訪問介護等を確認
  • 日中、どの位スタッフが常駐しているか?
  • スタッフはどんな資格を有しているか?
  • 夜間帯ににスタッフ(有資格者)が常駐しているか?
  • 夜間帯のスタッフ数は何人か?
  • 夜間の緊急時の対応は?
  • 食事は弁当か?施設内厨房で調理しているか?

など、事前に確認してみましょう。

まとめ

囲い込みや過剰な介護保険サービスの提供など、悪い印象ばかりが残ってしまった方もいらっしゃると思いますが、良いサービス付き高齢者向け住宅もたくさんあります。

良いサービス付き高齢者向け住宅は、入居者本人のライフスタイルをケアプランに組み込み、入居者に合った事業所を選定してくれますし、同敷地内にデイサービスが併設されていても、もちろん利用するかしないかはご本人のご希望に沿ってくれます。

日々充実した生活を送れるよう、アクティビティにも力をいてているところもあります。

家族やご本人だけでは選ぶことが難しい場合には、有料老人ホーム紹介センターなどを活用することも一つの手段です。介護付有料老人ホームだけでなく、サービス付き高齢者向け住宅選びのお手伝いもしてくれます。

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この記事を書いた人

埼玉県生まれ。博報堂勤務を経て、埼玉県内の介護事業会社勤務。
医療福祉接遇インストラクター、東京都福祉サービス評価推進機構評価者。
2001年より成長期の大手介護事業会社において、広告宣伝室室長として、社外向けの広報誌の作成、入居者促進業務に携わる。

書籍
『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』

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