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深刻化する空き家問題の現状と対策を解説

空き家の増加が社会問題として注目されています。

ここでは、空き家問題の現状や出来得る対策について解説していきます。

目次

そもそも空き家とは?

空き家とは、「人が住んでいない家」のことですが、掘り下げて考えると次の4種類に分類されます(※)。

空き家の種類説 明
賃貸・売買用及び二次的住宅を除く空き家賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など
(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む。)
賃貸用の空き家新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
売却用の空き家新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
二次的住宅別荘週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふだんは人が住んでいない住宅
その他ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなった時に寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅

昨今、問題になっている空き家のほとんどは、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。

空き家の現状

総務省の調査(※)によると、2023年10月1日現在、全国の空き家数は約900万戸、総住宅数に占める空き家の割合は約13.8%で過去最高となっているそうです。

空き家数の推移をみると5年前の2018年から約51万戸、1993年からの30年間では、約2倍に増えています。

空き家数のうち、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は約385万戸で、2018年から約37万戸の増加、総住宅数に占める割合は約5.9%となっています。

空き家というと、地方に多いイメージがあります。空き家率を都道府県別にみると、和歌山県と徳島県が21.2%と最も高くなっています。

また、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率」を都道府県別にみると、鹿児島県が13.6%と最も高くなっています。

ところが、空き家数でみると、都市部の方が圧倒的に多くなっており、東京都が約898万戸、大阪府が約703万戸で1位,2位、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家数」も、大阪府が約227万戸、東京都が約215万戸と、1位,2位となっています。

このことからもわかるように、空き家問題は、地方だけではなく、都市部も含めた全国的な問題なのです。

空き家問題でいう空き家とは?

空き家問題でいう空き家は、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」だと先程申し上げましたが、空き家対策の推進のために、「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律が制定されていて、その中では「空家等」とされ、次のように定義されています。

「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。

ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。

なんだか、よくわかりませんよね。

具体的には、国土交通省が、「概ね1年以上利用の実態がない住宅」と定義しています。

1年以上利用の実態がないというのは、1年以上人の出入りがないということなのですが、行政が空き家をずっと監視できるわけではないので、1年間の水道・電気・ガスの利用状況などから総合的に見て、「空家等」と判断されます。

空き家問題が起こる背景

相続

空き家所有者の半数以上が、相続により取得しています。親が亡くなり、別の場所で住む子どもなどが実家を相続した際に起こります。

相続したものの、遠隔地に住んでいるため維持管理をするにも難しい、売却しようにも設備等が古いため買い手がつかない、解体費用をかけたくないといった事情から、空き家として放置されることが多くなります。

高齢化

実家で一人暮らしをしていた親が施設や子どもの家に転居した際にも、空き家が発生します。

子どもが実家の近くに住んでいれば良いのですが、遠く離れて住んでいるような場合、やはり管理が不十分となり、空き家として放置されることとなります。

建物の老朽化

建物が老朽化し、売却も賃貸等も見込めない状況となり、解体もせず放置されるようなケースです。

空き家問題が引き起こす影響

外壁の落下等

外壁や屋根などが破損、傷んでいる状態を放置すると、それらの部材が落下する危険があります。通行人や近隣の家屋に被害を及ぼす可能性があります。

火災リスクの増大

空き家は放火の対象として狙われたり、電気設備の劣化等から火災が発生する可能性があります。

衛生面の悪化

ねずみや害虫などが大量発生すると不衛生な状態となってしまいます。また、それらの糞尿や死骸、放置されたゴミなどから悪臭が発生する原因にもなります。

景観の悪化・不動産価値の低下

空き家周辺は、管理がきちんとされないため、雑草の繁殖や建物の劣化などから、地域の景観を損ねます。さらに、その空き家周辺や、空き家が多い地域は、住宅地としての魅力が下がるため、不動産価値が低下する傾向があります。

倒壊

空き家の傷みが進むと、地震や台風などで、倒壊する危険性が高まります。

空き家問題を解決するためにできること

相続対策

空き家の取得原因は、半数以上が相続によるものです。親などが元気なうちに家族でよく話し合い、方針を決めておくことが重要です。

親の考えや思いなどがわからないまま、子ども達が実家を相続すると、空き家になった実家をどうするか決まらず、相続手続きが滞り、空き家のまま長期間放置されてしまうケースが珍しくありません。

空き家になることを避けるためにも、相続後は、「誰が住むのか」「売るのか」「貸すのか」「取り壊すのか」など、家族で事前に話し合っておくことが大切です。 

また、今は空き家でなくても、親の施設への入居やお亡くなりになったことなどをきっかけに、実家が空き家になってしまう可能性が十分に考えられます。

行政の空き家対策制度の利用

各自治体は、空き家問題の解決のために、さまざまな支援制度を設けています。

また、自治体によっては、補助金や助成金の提供だけでなく、空き家バンクの運営、活用したい人とのマッチングなど、民間企業やNPO法人と提携などを行い、サービスを紹介しているところもあります。

空き家がある各自治体に相談されてみてはいかがでしょう。

空き家のリフォーム

地域を選びますが、空き家をリフォームすることにより、賃貸物件やシェアハウス、民泊として活用し、空き家に新たな価値を見出すことができますし、地域の魅力向上にも寄与することとなります。

目的に応じてどのようなリフォームが望ましいのか、検討してみましょう。

売却する

思い出がたくさん詰まった家に愛着がある、将来親族の誰かが使うのではないかなどと考えることで、売却することをためらって、使用可能な住宅であるにもかかわらず、結果的に空き家になってしまうケースもたくさんあります。

空き家を所有しているだけで、維持費や固定資産税等経済的負担がかかります。売却時、条件を満たせば譲渡所得から3,000万円の控除を受けることもできますので、検討してはいかがでしょうか?

空き家の解体

空き家を解体し、その跡地に新しい建物を建てたり、駐車場として活用してみましょう。自治体によっては、解体費用に補助金が出るところもあります。

専門家へ相談

空き家問題は、簡単に解決できる問題ではありません。自治体、不動産会社、司法書士等、これまでたくさんの相談を受け、各方面で連携して取り組みをしています。

空き家ごとに抱える問題はさまざまです。

専門家は、その経験を駆使して、解決へのお手伝いや良い提案が出来るでしょう。

まとめ

高齢化社会、人口減少、相続問題など、空き家が増加し続ける背景にはさまざまな要因があります。空き家を放置すると、空き家そのものだけでなく、周辺にも悪影響や危害を加える恐れがあります。

空き家はそのままにせず、「仕舞う」(除去)・「活かす」(活用)の行動が求められています。

※出典:「令和5年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)

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この記事を書いた人

手柴 秀和(てしば ひでかず)

司法書士(東京第3220号)
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(第101079号)
マンション管理士(第0024030369号)
古物商許可(第306652215283号)

1970年 東京都中野区で生まれる
1989年 早稲田高等学校卒業
1994年 慶応義塾大学商学部卒業
1998年 司法書士試験合格
2000年 独立開業

当事務所は、相続、遺言、贈与、売買、抵当権設定、会社設立、役員変更、商業法務の相談、成年後見、簡易裁判業務等、多岐にわたり業務を扱っています。

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