生活支援・認知症・介護・身元保証・有料老人ホームへの住み替え・終活まで。シニアが安心して暮らせる総合支援窓口

市町村の広報誌や役場の掲示板でも目にすることの多い地域包括支援センター。

名前を聞いたことはあっても、何をしてくれるところなのかが分からない方も多いと思います。どんなところで何をしてくれるのかをわかりやすく解説いたします。

目次

地域包括支援センターとは高齢者が無料利用できる相談窓口

厚生労働省のホームページによると、地域包括センターとは次のように表記されています。

地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関として市町村が設置しています。
現在、全国で5,270所が設置されています。(ブランチ(支所)を含めると7,305か所)
※令和3年4月末現在

また、介護保険法の第 115 条の45には、次のように定められています。

地域包括支援センターは地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設

つまり高齢者が住み慣れた地域で、安心して・自分らし・いきいきと暮らしていくために、介護・福祉・健康・医療など様々な分野から、高齢者とその家族の生活を支えるための相談窓口です。

簡単に言えば、高齢者が無料で利用できる公的な相談窓口で、センターに在籍している保健師または経験のある看護師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)などの専門資格者が、相談に応じてくれるところです。

相談内容によって、医療機関や介護や福祉サービス事業所の紹介や、市町村と連携をとり適切な窓口につないでくれます。

人口2~3万人の日常生活圏域(中学校の学区域)に1ヶ所程度設置されていて、その地域に住む65歳以上の高齢者や、高齢者に関わる人なら誰でも利用できますが、注意していただきたいのが「その地域に住む」という所です。

お住いの地域によって、担当する地域包括支援センターが異なりますので相談に行く前に担当となる地域包括支援センターを確認する必要があります。

自治体のホームページや、広報誌などで確認することができますので、一度調べておくと良いでしょう。

親しみやすい名称になっている自治体も

「地域」「包括」「支援センター」という名称は何をしているところかわかりにくいため、各自治体ではわかりやすいネーミングを付けているところもあります。

一例をご紹介します。

  • 江東区「長寿サポートセンター」
  • 千代田区と北区「高齢者あんしんセンター」
  • 豊島区「高齢者総合相談センター」
  • 世田谷区「あんしんすこやかセンター」
  • 板橋区「おとしより相談センター」
  • さいたま市は「シニアサポートセンター」

市町村から委託を受けた法人が運営していて、社会福祉法人・医療法人・公益法人・NPO法人・その他市町村が適当と認めた法人(民間)ですが、その多くが社会福祉法人が受託していて、特別養護老人ホームなどに併設されているケースが多いのはそのためです。

どんな相談ができるのか?

総合相談支援業務

高齢者が無料で利用できる相談窓口

地域の高齢者の、暮らしや介護に関する様々な悩みや心配事の相談に応じてくれ、家族や近所の人からも高齢者に関する相談を受け、適切な窓口に繋いでくれます。

要介護認定の相談はもちろん「物忘れがひどくなってきた」「体力に自信がなくなってきた」「今、利用しているサービス事業所に不満がある」など、さまざまな問題の相談に応じてくれます。

相談方法は、電話相談、窓口で直接相談をする方法があります。

相談者の状況によっては地域包括支援センターの職員が直接ご自宅を訪問してくださり、相談に応じてくれるケースもあったり、遠方に住んでいる親のことを相談したい場合は、親が住んでいる地域の、地域包括支援センターに相談をしてください。

どんな相談ができるのか?

権利擁護業務

お金や財産管理、虐待などの権利を守る

地域の高齢者のお金や財産管理、虐待など、財産や人権などを守る「権利擁護」です。

認知症になるとご自身の金銭管理が難しくなってきますし、家の売却などの手続きもできなくなります。

そこで、たとえ認知症になっても不利益を受けず、住み慣れた地域で安心して生活をすることができるよう、「成年後見制度」についての相談に応じてくれます。

また、悪質な訪問販売や住宅リフォーム。詐欺などの被害に遭った場合は被害者に代わって警察や消費者センターへの連絡や報告をはじめ、解決方法や救済のための相談にも応じてくれます。

こちらも、高齢者本人からの相談だけでなく、ご家族や近隣の住民からの相談にも応じてくれます。

例えば、「隣に住んでいる、おじいちゃん。在宅介護を受けているようだけれど、良く、お嫁さんがおじいちゃんを怒鳴る声がする」など、虐待かな?と思った場合には相談してみましょう。

もし、高齢者への虐待が発覚した場合は、市や関連機関と協力しながら、被害を受けている高齢者を一次的に、施設へ措置入所させる手続きも行ってくれます。

同時に、介護者にも関わり、介護者が抱える問題の相談や、心のケアを行いつつ、再発防止に努めています。

もちろん、通報者の身元が明かされることはありませんので、少しでも気になったが相談しましょう。虐待の早期発見に繋がります。

包括的・継続的ケアマネジメント支援事業

暮らしやすい地域づくりへの取り組み

高齢者がいつまでも住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、介護サービスを提供する事業所や医療機関とのネットワークづくりを進めています。

地域のケアマネジャーと、さまざまな機関との連携を図ったり、情報交換ができる場所を提供するなどし、ケアマネジャーの支援や指導を行うことで、地域の高齢者に対して、質の高いサービスが提供できるような支援をしています。

また、支援困難事例と呼ばれる、対応が難しい事案を抱えるケアマネジャーの相談に対しては、市と協力して支援を行っています。

介護予防ケアマネジメント業務

元気で自立した生活を送るための取り組み

いつまでも元気で自立した生活を送るためには、適度に身体を動かすこと、家から外に出て、人との交流を行うことなどが大切です。

そこで、地域包括支援センターでは、介護が必要な状態にならないよう「健康づくり」や「介護予防」のための支援を行っています。

交流の場としては、街かどカフェ。楽しく身体を動かすことができる、はつらつ体操など、地域により活動内容は異なりますが、気軽に参加できる活動を行っています。

また、介護保険の申請で要支援認定を受けた方が、介護予防サービスを利用するための介護予防ケアプランの作成や、地域で開催している介護予防体操などのマネジメントを行っています。

なお、介護保険申請で要介護1~要介護5の認定を受けた方のケアプランは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成します。

地域包括支援センターにいる専門資格者の役割

地域包括支援センターには、保健師または経験のある看護師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)が配置されていて、それぞれが保有している資格にあった相談業務を行っています。

保健師

保健師または経験のある看護師は、地域の高齢者を対象に介護予防に役立つ健康づくり教室の主催や情報の提供を行うほか、本人やその家族からの相談に応じて医療機関などの紹介や調整を行い、自立した生活が継続できるよう支援しています。

また一人暮らしの高齢者の家庭訪問などを行い、地域内で高齢者が孤立しないよう、ボランティア活動への参加の呼びかけも行っています。

保健師は看護師の資格を有していますので、医療的な知識やサポートが必要な相談にも応じてくれます。

社会福祉士

社会福祉士は、高齢者やその家族が抱える介護や福祉に関する様々な相談に対して対応してくれる専門家です。

高齢者の権利擁護のために、相談内容に合わせて市町村と連携を図る適切な窓口を案内し、必要な制度やサービスにつなげるための支援を行っています。

主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)

主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、その地域で働くケアマネジャーへのアドバイスをしたり、各事業所のネットワークをつなげ、支援が円滑に行えるようサポートします。

たとえば、地域のケアマネジャーが抱える支援困難事例を各専門職、関係機関と連携しながら具体的な支援方針を検討し、アドバイスをするなどの業務を行っています。

また、ケアマネジャー協議会と合同で事例検討会などを開催し、ケアマネジャー同士の情報交換会を行い、地域の高齢者が安心して生活ができる適切なプランが立てられるよう、地域のケアマネジメントの向上を目指しています。

※主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、主任介護支援専門員の資格有したものが5年以上の経験と研修を受講することで取得できる。

他の様々な活動内容

地域によって異なりますが、今まで記述した以外にも、次のようにさまざまな活動を行っています。

一人暮らし高齢者支援訪問

地域包括支援センターの訪問支援員が、地域の一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯を訪問し、専門家の視点で生活実態や心身の状態を把握し、一人ひとりにあった支援につなげています。

他事業者と連携した高齢者の見守

民生委員・自治会・行政と、見守り協定を締結した宅配お弁当サービスなどの事業者などと連携し、地域の高齢者の見守りを行っています。

介護者サロンの開催

在宅で家族の介護をしている介護者が、悩みや疑問について情報交換をしたり、介護のストレスを和らげるような交流を図っています。

オレンジカフェ(認知症カフェ)の開催

認知症のご本人や、認知症の介護をする家族だけでなく、地域の方や専門職が交流できる憩いの場として定期的に開催しています。

自治体行事への積極的な参加

自治体活動へ積極的に参加をし、地域包括支援センター役割を多くの方々に周知していただくことを目的に行っています。

地域包括支援センターを活用しましょう

他人に頼ることは迷惑をかけることと考えている高齢者は多くいます。

ですから、多少困ったことがあっても一人で解決しようとするケースが多くみられます。

最近の事例では、近隣から「一人暮らしの高齢者の家から悪臭がする」という相談を受けて訪問したところ、足の調子が悪くてゴミを捨てに行くことができず、暑さのために家中の生ごみが腐敗していた」ということもあったそうです。

この事例からもご近所の方の相談は、高齢者の事故を防ぐ役割を果たしていることが解かります。

地域の高齢者とその家族を支えるための無料相談窓口です。何かの時のために、お住いの地域包括支援センターを探して活用してみてはいかがでしょうか?

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この記事を書いた人

埼玉県生まれ。博報堂勤務を経て、埼玉県内の介護事業会社勤務。
医療福祉接遇インストラクター、東京都福祉サービス評価推進機構評価者。
2001年より成長期の大手介護事業会社において、広告宣伝室室長として、社外向けの広報誌の作成、入居者促進業務に携わる。

書籍
『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』

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