自宅を売却して入居資金を準備するときの注意点

希望に沿った介護施設が見つかったので、今住んでいる自宅を売却して入所の一時入居金を準備することをお考えの方もいらっしゃると思います。
または、一時入居金は預貯金で準備して、ホームに引っ越した後の月額利用料を住まなくなった自宅を売却した代金を充当しようとお考えの方もいらっしゃると思います。
しかし、一時入居金のように契約時や入居時までに急いで準備しなければいけない場合や、月額利用料のように将来的な費用として時間に余裕をもって準備をしていく場合など、自宅を売却した代金をシニアホームの入居費用にお考えの方の中でも計画によってお金が必要なタイミングが異なります。
そこで、不動産は一体どのくらいの期間で売却できて現金化することができるのか?が、ホーム入居計画を立てる上で重要なポイントとなってきます。
ここでは、自宅が売却できるまでの期間や、売却する相手の2種類の大きな特徴、売却に準備しておくべき必要書類や諸費用などを解説していきます。
一般ユーザーと不動産買取会社の特徴とは
まず、不動産を売却する時に一番重要なことは「どのくらいの期間で現金化したいか?」ということです。不動産を購入する人は大きく分けると、一般ユーザーと不動産買取会社の2種類に分かれますが、どちらに対して売却するかで現金化までの期間が異なります。
その他にも自宅の状態が良いのか?リフォームや建て替えをしなければならないか?販売期間中の内覧立ち合いの対応、自宅が売れた後のアフター補償の問題…
これらの問題に関しても、一般ユーザーに売却する場合と不動産買取会社に売却する場合で異なりますので、一つずつ比べて解説していきます。
売却して現金化できるまでの期間
一般ユーザー向けに売却していく場合は、3か月~6ヶ月の期間を要することが一般的です。しかし、建て直しができなかったり火事や事故などの心理的瑕疵があると、一般ユーザーから敬遠されるため1年以上経っても売れないことも少なくありません。
不動産買取会社向けに売却していく場合は、約1ヶ月程度で早ければ1~2週間で現金化できます。一般ユーザーだと敬遠されてしまう物件でも確実に売却することができます。
一般ユーザー | 不動産買取会社 |
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3か月~6ヶ月 1年以上かかって売れない場合も物件の特徴によって成約期間が変化 |
約1ヶ月程度 早ければ1週間~2週間物件の特徴に関わらず成約期間は決定 |
月額利用料として計画している方に適している | 一時入居金として計画している方に適している |
ローン特約条項の有無
ローン特約とは、買いたい人が見つかって売買契約を締結するとき、買主が住宅ローンなどの融資を利用して購入する場合は、銀行からの融資が得られないときは売買契約を白紙に戻して契約解除ができるという買主保護の特約です。
一般ユーザー向けに販売していく場合は、ほぼ100%銀行等から住宅ローンの融資を利用して購入するため、ローン特約条項付の売買契約となります。
不動産買取会社向けに販売していく場合は、ローン特約条項はありません。もちろん銀行からの借入を行って事業化するのですが、不動産のプロのため個人の売主さまを保護するために、ローン特約条項がない契約となります。
一般ユーザー | 不動産買取会社 |
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ローン特約付の売買契約 ローンが通らない場合は白紙解約売買契約後もローンが確定するまで現金化が確定できない |
ローン特約なしの売買契約 ローンが通らない場合でも白紙解約にはならない売買契約した時点で現金化の時期が確定 |
月額利用料として計画している方に適している | 一時入居金として計画している方に適している |
建物の使用状態
一般ユーザー向けに販売していく場合は、建物の状態が古かったり故障していたりすると、なかなか売れないためリフォーム等の手直しが必要になります。
なぜ売れにくいかというと、一般ユーザーは最初に見た印象が強く残り、リフォーム後のイメージが想像しにくいためです。そのため悪印象のみが残ってしまい、通常なら3か月で売れる自宅が6ヶ月以上経っても売れないということがあります。
また、リフォーム費用がいくら掛かるか分からない不安や、住宅ローン以外にリフォーム費用の準備ができないといった理由が原因となっています。
不動産買取会社向けに販売していく場合は、建物の状況が古かったり故障していても問題ありません。内装リフォームして販売することを目的としているためです。
一般ユーザー | 不動産買取会社 |
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建物の状況に影響あり 古かったり故障している場合にはリフォームする必要があるリフォーム費用を売主側で準備しなければならない |
建物の状況に影響なし 古かったり故障してる場合でも現状のままで売却可能リフォーム費用を売主側で準備する必要はない |
月額利用料として計画している方に適している | 一時入居金として計画している方に適している |
内覧の立ち合い
販売活動を開始すると購入を検討している方から内覧の希望があります。もうホームへ引越が終わって自宅が空家になっている場合は、鍵を渡せば内覧に立ち会う必要はありませんが、まだお住いの場合には内覧に立ち会わなければなりません。
一般ユーザー向けに販売していく場合は、細かなところまで確認されます。例えば押し入れの広さを知りたいと勝手に開けられたり、水回りの状況を知りたいと勝手に水を出して水圧や水の流れを確認したりして15分~30分程度かけてじっくり確認されます。
また、売れるまでに内覧に来られる方は一般的に5組~10組程度いるため、その都度何度も対応しなければなりません。夕食時に近い時間帯やくつろいでいる時間帯を希望されたり、生活感のある状況を見せなければいけないためプライバシーが晒されてしまいます。
不動産買取会社向けに販売していく場合は、1回だけの内覧立ち合いで完了します。プロであるため間取図面から押し入れ等の広さは確認しなくても把握しているため細かな部分の確認はなく、建物の状態や採寸が目的のため10分程度で完了します。
一般ユーザー | 不動産買取会社 |
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立会時間は15~30分程度で5~10組に対応が必要 日時はその都度購入検討者の都合優先プライバシーが守られないリスクあり |
立会時間は10分程度で1回の立ち合いで完了 日時は所有者の都合優先プライバシー保護を優先できる |
月額利用料として計画している方に適している | 一時入居金として計画している方に適している |
引き渡し後のアフター補償
自宅を売却して引き渡しが終わった後に、故障が見つかった場合の補償責任を瑕疵担保責任と言います。例えば屋根裏の雨漏りや、配水管のつまり、土地を掘ったら廃棄物が埋まっていたなど、内覧の時に気づかなかった問題があったときが瑕疵担保責任に該当します。
一般ユーザー向けに販売していく場合は、売主は瑕疵担保責任を物件引渡しから2か月間の間は追うこととなります。
不動産買取会社向けに販売していく場合は、売主側の瑕疵担保責任を負わないでよく、万が一故障が出たとしてもノークレーム・ノーリターンとなります。
一般ユーザー | 不動産買取会社 |
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瑕疵担保責任は2か月間あり 故障が見つかったときは売主の費用負担で修理物件引渡しから2か月間は補償リスクを負う |
瑕疵担保責任は負わないで良い 故障が見つかったときは買主の費用負担で修理物件引渡し後はノークレーム・ノーリターン |
月額利用料として計画している方に適している | 一時入居金として計画している方に適している |
不動産売却価格
一般ユーザー向けに販売していく場合は、住宅情報サイトなどで掲載されている一般市場の物件を基準として、今までご説明した物件の状況により販売開始価格を決めていきます。問い合わせや内覧の希望がない場合には、徐々に価格を下げていきます。
不動産買取会社向けに販売していく場合は、購入希望価格を申し出てもらいます。リフォーム等の諸経費分が一般市場より減額されてしまいます。
一般ユーザー | 不動産買取会社 |
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住宅情報サイト等の一般市場が基準 問合せ等がない場合には徐々に価格を下げていく一般市場に沿った最高値での成約を目指せる |
一般市場から諸経費分を減額した価格 不動産買取会社からの価格申し出一般ユーザー向けよりも価格が下がってしまう |
月額利用料として計画している方に適している | 一時入居金として計画している方に適している |
不動産を売却する時に準備しておく書類
不動産を売却するうえで事前に準備しておく書類や、購入者が見つかり売買契約を締結するときに必要な書類や、引渡の時に必要な書類と注意点などを解説していきます。
必要書類は次のものがありますが、不動産会社が準備してくれるものもありますので、見つからなかったり紛失してしまった場合はその旨を伝えてあげましょう。
不動産を売却するための事前書類
- 登記済権利証・登記識別情報
- パンフレット・販売図面
- 購入した時の不動産売買契約書や重要事項説明書
- 建物建築確認済証・建物検査済証
- 建物設計図書・リフォーム等工事記録書
- 登記簿謄本・全部事項証明書
- 固定資産税納税通知書
- 住宅ローン残高証明書・返済予定表(借入がある場合)
不動産売買契約する時の書類
- 顔写真付き身分証明書(運転免許証等)
- ご実印
- 印鑑証明書
- 住民票(登記上の住所と住民票上の住所が異なる場合)
- 手付金の領収証
- 住宅ローン残高証明書・返済予定表(借入がある場合)
物件引渡し(代金決済)の時の書類
- 顔写真付き身分証明書(運転免許証等)
- ご実印
- 残代金・固定資産税等精算金の領収証
- 抵当権等抹消費用(抹消事項がある場合)
売却した時の諸経費
仲介手数料
不動産を売却した際に、成約価格の3%+6万円に消費税10%が仲介手数料として掛かります。
物件価格 | 仲介手数料(税込価格) |
1,000万円 | 396,000円 |
2,000万円 | 726,000円 |
3,000万円 | 1,056,000円 |
4,000万円 | 1,386,000円 |
5,000万円 | 1,716,000円 |
6,000万 | 2,046,000円 |
7,000万円 | 2,376,000円 |
8,000万円 | 2,706,000円 |
9,000万円 | 3,036,000円 |
1億円 | 3,366,000円 |
仲介手数料が掛からないケース
一般ユーザーに売却する場合、不動産を仲介してくれる会社に対して成約した時に仲介手数料が必要になりますが、不動産買取会社に売却する場合、仲介会社を介せず直接取引となるため、仲介手数料が掛かりません。
そのため、一般ユーザーに売った場合は売却価格は高額で成約となりますが、手取り価格は仲介手数料分の約3%相当額分下がってしまいます。
一般ユーザー | 不動産買取会社 |
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仲介会社へ仲介手数料が掛かる 成約価格の3%+6万円×消費税10%相当額 |
直接取引の場合仲介手数料は掛からない 仲介手数料無料 |
抵当権等抹消費用
売却するご自宅に住宅ローンの抵当権等の設定がある場合、代金決済時までに金融機関へ残額を一括返済して、抵当権を抹消しなければなりません。
抹消登記の手続きを司法書士に依頼する場合は約2万円~3万円程度の報酬が必要となります。
まとめ
不動産を売却するときに、一番重要となることは現金化までの期間です。一時入居金等に充当を検討されている方は不動産買取会社への売却が適しており、急いで現金化する必要はなく将来の月額利用料として検討されている方は、一般ユーザー向けの売却が適しております。
しかし、物件の持つ特性や売却するまでの手続きや補償など全体的に検討して、最適な売却方法を不動産会社さんに相談されることをお勧め致します。