「社協」の名前は聞いたことがあっても、何をしているところなのかよくわからない方も多いと思います。
社協とは社会福祉協議会の略称で、青い文字が特徴の全国共通の社会福祉協議会のシンボルマーク。
社会福祉及び社会福祉協議会の「社」を図案化し、「手をとりあって、明るいしあわせな社会を建設する姿」を表現しています。
戦後GHQの指示により設立された全国社会福祉協議会
戦後間もない昭和24年、GHQにより「社会福祉に関する協議会の設置」するよう指示が出されました。
この指示を受け、日本社会事業協会(前身は、明治41年に設立された中央慈善協会で、同協会の初代会長は渋沢栄一氏)と日本民生委員連盟、軍人援護会を母体とする同胞援護会が統一され、昭和26年1月の民間の社会福祉活動を推進することを目的に、中央社会福祉協議会(現:全国社会福祉協議会)が設立されました。
戦災孤児や引揚者への援護活動、低所得者への支援、児童の健全な育成の推進、共同募金運動などを中心に活動を開始、以来現在に至るまで地域の人びとが住み慣れたまちで、安心して生活することのできる「福祉のまちづくり」を目指し、様々な活動を行っています。
社協はどこにあり財源はどうなっているのか
社会福祉協議会は、全国それぞれの都道府県、特別区、政令指定都市、市区町村単位に設置されていて、各社協がそれぞれの地域に応じた活動を行っています。
活動に参加しているのは、地域住民・民生委員・児童委員・社会福祉施設・社会福祉法人等の社会福祉などの関連分野の関係者で、保健・医療・教育など関連分野の関係者、さらには地域社会を形成する様々な専門家・団体・機関によって構成されています。
社協の財源は、地域住民からの会費・補助金・受託事業(相談、介護などの委託されて行っている事業の委託金)・共同募金からの配分金・財団等からの助成金・寄付金等となっています。
ここで注目してほしいのが、「地域住民からの会費」です。
もちろん強制ではなく、社協の取り組みに賛同した方が会員になり、会費を支払う仕組みになっています。個人会員の場合、会費は年間300円~500円ほどのところが多いようです。
会費の支払い方法は、「社協に持参するか振込」とホームページには記載されていますが、300円をを支払うためにわざわざ社協まで出向く人がいるのでしょうか?
では、どうやって「地域住民からの会費」を集めているかと言うと、自治会に加入している世帯の場合ですが、自治会の班長さんや会計担当の方が集金をしているのです。
私の住んでいる地域でも、自治会に加入している世帯は、市社協の会費と赤い羽根共同募金は、自治会の班長さんが集金に来てくれます。
しかし、最近では自治会に加入しない世帯も多いと聞いています。
社会福祉協議会は何をしている団体?
前述しましたが、社会福祉協議会は全国・それぞれの都道府県・特別区・政令指定都市・市区町村単位に設置されていて、各社協がそれぞれの地域に応じた活動を行っています。
では、私達の一番身近にある市区町村社会福祉協議会。具体的にどんな活動をしているのでしょうか?
地域住民参加による事業
- 高齢者や障がい者向けの安否確認も兼ねた配食サービス
- 高齢者世帯や、独居高齢者世帯への訪問活動
- 高齢者や地域で暮らす人たちが、交流することができる場となる場の提供
(ふれあい喫茶などの名称で、地域の公民館などを活用し、定期的に開催されている) - 子育てサロンの開催。子育て中のママやパパのお悩み相談。
子どもも保護者も過ごせる場所の提供をすることで、地域の仲間の輪が広がることを目的としている場の提供
(公民館が学校の空教室などを活用し、定期的に開催されている)。 - ボランティア活動に関する相談や活動先の紹介
(被災地でのボランティア募集は、被災地の社会福祉協議会のホームページなどで確認できます)
介護保険事業
- 高齢者や障がい者の在宅生活を支援する訪問介護事業所の運営。
- 通所介護事業所の運営。居宅支援事業所の運営。
住民参加を進める事業
- ボランティアセンターの運営
- ボランティア団体の支援
- ボランティア体験月間の実施
- 福祉講座・介護講座の実施
- 地域交流イベント、座談会の実施
各団体との連絡調整
- 校区社会福祉協議会の創設、指導、連絡調整
- 社会福祉施設の連絡、調整
- 民生委員・児童委員協議会の事務局運営
- 老人クラブ連合会の事務局運営
- 関係機関・団体の連絡調整
この他には、社協の活動を広く住民に伝えるため広報誌を発行していたり、共同募金への協力として赤い羽根共同募金、歳末たすけあい募金運動の実施を行っています。
このように、さまざまな福祉サービスをおこなっているほか、それぞれの社協が地域の特性を踏まえ創意工夫をこらした独自の事業に取り組んでいます。
日常生活自立支援事業とは?
都道府県社会福祉協議会では、認知症や知的障がい、精神障がいなどで、判断能力に不安のある方を対象に介護保険などの高齢者福祉サービス、障がい者自立支援法による障がい者福祉サービスの利用援助を行っています。
また、お金の管理に困っている方を対象に、日常的な金銭の管理等を行う「日常生活自立支援事業」を都道府県社会福祉協議会や市区町村社会福祉協議会と連携して実施しています。
あまり聞きなれない日常生活自立支援事業ですが、どんな支援をしてくれるのか、利用できる対象となるケースをまとめてみました。
福祉サービスに関する支援
福祉サービス(介護・障がい)から、どんなサービスを受けることができるのか等の情報提供や、相談に応じてくれます。実際にサービスを利用したい方へは、利用の申し込みや契約の代行まで行ってくれます。
また、利用している事業所への苦情だどが発生した場合には、解決するための制度の利用手続などの支援を行っています。
お金の出し入れに関する支援
預貯金の出し入れ、生活に必要な利用料などの支払いの手続きに関する支援をしてくれます。
一例として次のような手続きを行います。
- 毎月の利用料の支払いを代行
- 病院への医療費の支払い
- 税金、社会保険料、電気・ガス・水道などの公共料金の支払い
- 貯金の解約手続き
日常生活に必要な事務手続きの支援
住民票の届出や、商品購入時における苦情処理制度(クーリングオフなど)の、利用手続きに際しての支援などを行います。
通帳、印鑑、証書の保管
「貯金通帳をどこにしまったか忘れてしまう」「しまったはずなのに、見あたらない」などの不安がある方に対しては、預貯金通帳や、実印・銀行印などの印鑑を預かってもらえます。
通帳以外にも、年金証書・保険証書・不動産権利証・契約書などを預かり、日常生活の不安に対して支援するサービスですが、宝石・貴金属・絵画・骨董品のようなものは預かってはもらえません。
特別養護老人ホームの運営母体
特別養護老人ホームの運営母体は、自治体や社会福祉法人ということをご存じでしたでしょうか?
社会福祉法において社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人(厚生労働省のホームページ、社会福祉法人の概要)と定義されています。
ここでいう社会福祉事業とは、社会福祉法第2条に定められている第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいいます。
また社会福祉法人は、社会福祉事業の他公益事業及び収益事業を行うことができ、所轄庁(法人の所在地等に応じ都道府県知事又は市長等)の認可を受けて設立される法人です。
では、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業、他公益事業及び収益事業とは何かを細かく見ていきましょう。
第一種 社会福祉事業
- 生活保護法に規定する。救護施設。更生施設など
- 児童福祉法に規定する。乳児院、児童養護施設、障害児入所施設など
- 老人福祉法に規定する。養護老人ホーム、特別養護老人ホームなどを経営する事業など
第二種 社会福祉事業
- 保育所、幼保連携型認定こども園など
- デイサービスセンター、ショートステイ、訪問介護など
この他にも、公益事業として子育て支援施設。入浴・排せつ・食事等の支援事業。介護予防事業、有料老人ホーム、老人保健施設の運営。人材育成事業、行政や事業者等の連絡事業。
また、収益事業として、貸ビル、駐車場、公共的な施設内の売店の経営などを行うことができます。
一言でいうなら、社会福祉法人とは社会福祉事業を行うことを目的として設立される民間団体です。
社会福祉法人は全国に約21,000法人あり、そのうち福祉施設を運営する特別養護老人ホームは95%が社会福祉法人により運営されています。
特別養護老人ホームは、第1種社会福祉事業に属し、国や地方公共団体、社会福祉法人のいずれかが運営する仕組みになっています。※社会福祉法第60条
公共責任を果たす義務があるため、原則として株式会社等による企業経営は認められてなく、民間企業が特別養護老人ホームの運営することができません。
但し、構造改革特区に設置される特別養護老人ホームを除きます。
利用対象者とその利用方法
日常生活自立支援事業は、基本的には認知症の高齢者、知的障がいや精神障がいがあり判断能力が不十分で自分ひとりで契約などの判断をすることに対して不安のある方、お金の管理に困っている方が対象となります。
療育手帳や精神障がい者保健福祉手帳を持っていない方、医師による認知症の診断を受けていない方でも利用できるケースがありますので、前述したことに不安のある方はお住いの社会福祉協議会に相談してみましょう。
また、施設に入所している方、病院に入院していている場合でも利用することはできます。
施設や病院が実施している金銭管理サービスと連携をとり、定期的に相談員や生活支援員が利用料金の支払いなどの支援をしてくれます。
利用するには、社協または、地域包括支援センター・民生委員・ケアマネジャーなどに相談をします。
後日、専門の担当員が訪問し、現在困っていることなど相談に乗ってもらうことができます。
その後、契約の内容を確認し、支援計画を立てたのち、契約後サービスが開始されます。
相談は無料ですが、利用手続きや金銭管理のサービスを利用するには別途費用がかかりますが、その費用は地域により異なりますので、担当地域の社会福祉協議会までお問合せください。
生活福祉資金制度
経済的な支援を必要とする方を対象に、都道府県の社会福祉協議会が資金の貸付けやそれらに関わる必要な相談・支援を行う生活福祉資金制度があります。
貸付けの対象となる方
- 必要な資金を他から借りることが困難な世帯
- 障害者手帳などの交付を受けた人が属する世帯
- 65歳以上の高齢者が属する高齢者世帯
貸付を受けた費用は、日々の生活に必要な経費・病気療養に必要な経費・住宅の増改築や補修などに必要な経費・福祉用具などの購入経費・介護サービスや障害者サービスを受けるために必要な経費など、福祉に関する資金として利用することができます。
生活支援や生活再建までの間に必要な生活費用として、
- 敷金・礼金など住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用
- 一時的に生計の維持が困難となった場合に少額の費用を貸し付けてくれるケース
- 低所得者世帯の子どもが高校や高専・大学などに修学するために必要な経費
など、様々なケースに対応できる制度になっています。
苦情や相談の窓口の運営適正化委員会
福祉サービス(介護・障がい)を利用中に関する苦情の相談を受け付けてくれる運営適正化委員会を設置して、相談があった苦情等は、中立の立場から助言などを行い、問題の解決を図っています。
運営適正化委員会は、サービスを提供する事業者に対して適正な事業運営の支援や、サービスを利用する利用者に対しても支援に向けた取り組みを進めています。
また、個々の事業者が事業運営における問題点を把握し、サービスの質の向上に結び付けることを目的としている「福祉サービスの第三者評価事業」にも積極的に取り組んでいて、福祉サービスの質の向上や、サービスを利用する方の安心と満足を目指しています。(介護保険の事業所に関する苦情は、国民健康保険団体連合会でも受け付けています)
まとめ
高齢化が進む日本において、福祉サービスを基幹事業とする社会福祉法人はなくてはならない存在です。
事業はもちろんですが、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならないという責務である地域貢献活動にも力を入れていただき、誰もが暮らしやすい地域づくりに一役かっていただけることを期待しています。