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老後の不安、身元保証人がいないとどうなる?

目次

高齢者の身元保証

日本では賃貸契約や就職、入院や施設入居等あらゆる場面で身元保証人を立てるように要求されます。身元保証人を立てることで、契約の安心感に繋がるからです。

しかし、高齢になると身元保証人ができる人を探すのが難しいケースがあります。

ご家族や親戚にお願いできれば問題ないですが、近くに居なかったり保証人として頼むには難しい事もあるでしょう。

年齢を重ねれば重ねるほど、身元保証人を探すのは難しい人が増えてくるのではないでしょうか。

実際に総務省の相談窓口には、身元保証人がいない事で困っているという相談内容が各施設から上がっていて、年々増えているとの報告書もあります。

普段の生活の中では困ったことが無い限り、身元保証人はあまり重要視されませんが、いざという時に誰も保証人がいないと何も契約ができません。

万が一の時は、自分の意思を伝えられない可能性もあるので、終活の一つとして身元保証人を決めておく事が大切です。

この記事では、事例を交えて身元保証の必要性について書いていきます。

【事例】
Oさん(88歳男性)は、一軒家で柴犬のタロー(6歳)と住んでいます。

子供はおらず、妻と一緒にずっと犬を飼い続けてきましたが、その妻も3年前に亡くなりました。
3LDKの2階建ての家は、妻と歴代の犬たちとの思い出が詰まった大切な場所です。

タローの毎日の散歩は欠かしませんが、2階に上がるのが億劫になり、殆どの時間を1階で生活をするようになると、家がとても広く感じるようになりました。

週に一度、訪問ヘルパーが家の掃除をしてくれるので、2階も綺麗で上がる必要が無いのです。

ある日ヘルパーから、2階の廊下の屋根が雨漏りをしているのではないか?と言われました。
業者を呼んで、見てもらうと2階の廊下だけでなく、部屋の方も雨漏りする危険があると言われ、出された見積金額はかなりの金額でした。

Oさんは考えます。
「この家は、思い出が沢山あるから修理をして大事にしようか。でも、自分が死んだ後に引き継いでくれる人はいないから、どうせ壊してしまうんだろう。」

ここでOさんは思いました。
「自分が死んだ後、この家は誰が売ったり壊したりするんだ?遺言を残したらいいのか?誰かに頼めばやってくれるのか?誰かって誰に…」

その時、タローが足元にやってきて座りました。
「タローより先に死ぬ訳にはいかないと思っていたけど、万が一の時もある。妻が死んだ時には手続きは全て自分がしたが、自分の時は頼れる親戚もいないから、タローの事も含めてしっかり考えなくてはダメだ。」

Oさんは、次にヘルパーが来た時に相談しました。
「もし自分に何かあった時にどうしたら良いかと思って。あんた、俺の財産と家を相続してくれないか?タローも懐いてるし。」

ヘルパーは、戸惑いました。
「それは荷が重い相談です。万が一の時はタローちゃんは引き取っても良いですが、万が一の時が無いのが一番ですよ…」
「まぁ軽い冗談だ。こんな古い家なんてもらってもな。」

「素敵な家だと思いますよ。2階のお掃除をしていても思います。奥様が整理されたワンちゃん達の洋服とか首輪、ちゃんと誰のか分かる様になっています。ちょっと笑っちゃったんですけど、柱にワンちゃんの背比べの印が付いていますよね。」

「犬は俺らにとって子供みたいなもんだからな。母ちゃんと一緒に印付けたんだけど、無理やり押さえつけてつけたやつもいたな。暫く柱に近づかなくなったから可哀想なことしたよ。」

Oさんは笑いながらも少し寂しそうな顔をしました。後日、ヘルパーはOさんとの話をケアマネに相談しました。

Oさんは自宅での生活に難しいことはありませんでしたが、先の事を考えると早いうちから施設の入居を考えても良いとケアマネは思い、Oさんにパンフレットだけ渡しました。

ペットも一緒に入居できる施設だったので、Oさんも前向きに施設の見学に行きましたが、そこで必要となったのが身元保証人です。Oさんには子供も近しい親族もいません。

遠くの親戚を当たればいるかもしれませんが、ほとんど他人です。身元保証人をお願いできるような間柄ではありません。

折角良い施設で今後の不安もないと思ったのに、諦めるしかないと思ったOさんですが、ケアマネからもう一つ紹介されたのが身元保証会社でした。

身元保証会社の担当は、Oさんの身元を保証するにあたって、どのような生活にしていきたいか希望を聞いてくれました。

Oさんは、家の事やタローの事や自分の死後の葬儀の事など相談しました。その上で身元保証会社の担当は、できることを教えてくれたのです。

安心して任せられると思ったOさんは、身元保証の契約をしてタローと一緒に施設へと入居しました。
入居する前、最後の訪問に行ったヘルパーにOさんは話してくれました。

「身元保証をしてくれた会社が不動産もやっていて、この家を賃貸で管理してくれるっていうんだ。だから雨漏りも直すんだよ。」

「それは良かったですね。でも2階の柱もきれいに変えちゃうんですか?」

「それは写真と心に残す事にしたよ。あの家で、別の家族がまた新しい思い出を残していってくれたら、俺も嬉しいからな。色々と任せられる所があって良かったよ。」

身元保証人の重要性

身元保証人の主な役割は、特定の取引や契約において、当事者がその責任を果たせない場合にその責任を負うことです。身元保証人がいることで、契約の安定性や信頼性を得ることができます。

Oさんは老後の事を考えた時に、自分の事は自分でするとしか決めてなかったため、死後の事はご自分ではできないと分かった時、頼れる親族は周りにいませんでした。

また、施設へ入居をしたいと思った時にも、保証人になれる人はおらず、大切な家の管理も自分が生きていても、できなくなった時の事を考えると任せられる人はいませんでした。

このように、いざ必要になった時に身元保証人を探すのはとても大変です。

身元保証人は必要になった時ではなく、その前からご自分が信頼できる人や身元保証サービスを探しておく必要があります。

Oさんは、ご自分の意思を身元保証会社の担当へ話すことができましたが、認知症などで判断能力が無い場合や意思疎通が取れない場合は、身元保証人をつけることが難しいです。

しっかりとご自分の思いを話せる時に身元保証人を選んでおく必要があります。

身元保証でできること

身元保証人は、家族や親戚、友達でもなることができます。一人暮らしの高齢者の場合は、Oさんのように身元保証会社を利用する事が多いです。

ご家族が海外など遠方にいる場合でも、身元保証会社を使っておくと便利です。

それでは、高齢者が身元保証人を必要とするケースについて、いくつか紹介していきましょう。

介護施設での身元保証人

介護施設に入居するには、契約を交わす必要があります。施設によって契約内容は様々ですが、身元保証人を立てなくては入れない所が殆どです。

それは、緊急時の連絡先や、月々の入居費用の支払いの保証のためです。

病院への入院の際の身元保証人

病院に入院する際にも身元保証が必要になります。それは、介護施設と同様に緊急の連絡先や支払いの保証のためと、治療方針の協議のためです。

身元保証人が居ないから治療ができないという事にならないために、自分の身元保証人を決めておきましょう。

死後の葬儀や事務処理

葬儀・納骨・遺品整理・行政の手続きなどを行います。保証サービスによっては別料金の会社もあります。

ご自分の死後は、ご自分では手続きできないため、葬儀の形式や宗派等をどのようにされたいか、身元保証人としっかり話しておくことが大切です。

身元保証人がいない事で契約を断られるケース

病院や介護施設は、身元保証人がいないと入院や入所を断ることがあります。

入院に関して病院側には、厚生省から身元保証人がいない事で断ることが無いよう指導されるようですが、現状は断られるケースが多いです。

介護施設は特に、月の支払いが滞ることを懸念されますので、身元保証人の収入なども聞かれる場合があります。

身元保証サービスのメリットとデメリット

身元保証人を家族に頼む事ができれば一番良い事ですが、一人暮らしが長くて家族と疎遠になってしまっている方は、今更お願いできる間柄でもないし、断られたら余計に関係を悪くすると気にされる方も多いようです。

そこで使われるのが、身元保証サービスです。

身元保証サービスは、一般社団法人やNPO法人、民間の株式会社が運営しています。

身元保証サービスを使うことのメリットは、先に挙げたように家族に頼みづらいときにも心配をさせることなく施設などに入居できる点です。

また、法人が運営していますので、法人が倒産や解散しない限り永続的にサービスを受け続けられます。

家族や個人が身元保証人になると、その方より先に何かあった場合、また新たに身元保証人を立てなくてはいけません。あまり考えたくはありませんが、保証人がいなくなる場合があるのです。

一方、身元保証サービスのデメリットは費用が掛かることです。

契約によって様々ですが、初期費用と契約期間ごとの更新料、月々の支払が必要になるため、ある程度の資金が無いと契約を続けることができないのが大きなデメリットです。

また、身元保証サービスによっては、サービス内容と金額に決まりが無いため、よく内容を把握しておかなければ意に沿わない契約になってしまう事もありますので、注意してください。

まとめ

身元保証人は、日本の古くからの風潮みたいなところがありますが、個人的には自分の事を頼ることができる人がいるという安心感を得られるものだとも思います。

お一人で暮らす高齢者が増え続ける昨今、訪問ヘルパーとして伺った先で、頼れる人がいないと相談されたこともありました。

事例のOさんのように、相続してほしいと頼まれたこともあります。

お手伝いできることであれば、時間はさけますが、個人でできる範囲には限界がありますので、ケアマネージャーとも相談して悩む事が多かったです。

身元保証会社の方のお話しを聞くと、「人は困ってからしか動けないから」と身元保証をあらかじめ考えておく重要性を理解してもらうのは、難しいと仰っていました。

確かにその通りだと思います。

保険を考えるのと同じくらい身近に身元保証を考えて、不安のない生活を送っていただきたいです。

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この記事を書いた人

シニアが安心して暮らせるための情報や、専門家の方へのインタビュー等のお役立ち情報を分かりやすく発信してまいります。

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