要介護申請をしてくださいと言われたので、申請をしたら要支援という判定だったり、そもそも要支援と要介護って何が違いに疑問をお持ちの方も多くいらっしゃると思います。
そこで今回は、要支援と要介護の違いを解説します。
介護の度合いを表す要支援と要介護
要介護申請をすると、その方の身体状況などにより次の認定を受けることで、介護保険のサービスを利用することができるようになります。但し、自立(非該当)の方は介護保険のサービスを利用できません。
- 【自立】非該当
- 【要支援】要支援1、要支援2
- 【要介護】要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5
では、要支援と要介護はどこが異なるのでしょうか?厚生労働省の要介護認定に関わる法令は次の通りです。
【要支援】
身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について厚生労働省令で定める期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために厚生労働省令で定める期間にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態
簡単に言えば、日常生活はなんとか一人でできるが、一人で生活することが難しい部分もあり支援が必要な状態。
さらに「悪化の防止に特に資する支援」と定められているように、これ以上悪化しないように予防するための支援が必要な状態で、要支援1~2に分けられ、介護予防サービスを利用することができます。
介護予防サービスは、まだ一人でできることは多いが、ちょっと手助けが必要な方に対する支援です。
つまり、現状を維持していただき「要介護状態にならないようにするための予防サービス」ですので、生活機能の維持向上を目的としています。
【要介護】
身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態
こちらも簡単に言えば、日常生活は誰かの手を借りないとできず、一人で生活することが難しい状態。
要介護1~5に分けられ、日常生活を維持していくために必要な、介護サービスを利用することができます。
要支援と要介護では異なる相談窓口
要介護認定の結果が出たら、ケアプランを立ててもらい、介護保険のサービスを利用します。
要支援は、生活機能の維持向上が目的で、要介護は、日常生活を維持するために必要な介護サービスを提供することです。
そもそもの意味合いが異なるため、要支援と要介護ではケアプランを立てる窓口が異なりますので注意してください。
要支援の窓口は地域包括支援センター
要支援1~2と認定された方は、地域包括支援センターが窓口となります。
地域包括支援センター担当職員に介護予防サービス計画 ( 介護予防ケアプラン ) を作成してもらい、介護予防サービスを利用します。
地域包括支援センターは、市区町村や、市区町村が委託する組織により公的に運営されていて、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの有資格者が職員として働いています。
要介護の窓口は居宅介護支援事業者
要介護1~5と認定された方は、居宅介護支援事業者が窓口となります。
居宅介護支援事業者のケアマネジャーに依頼して、利用するサービスを決め、介護サービス計画 ( ケアプラン ) を作成してもらい、介護サービスを利用します。
余談となりますが、ケアマネジャーにはいろいろなタイプの人がいます。もちろん、どのケアマネジャーも優秀な人達ですが、ケアマネジャーとの相性は重要なポイントの一つです。
担当となったケアマネジャーが「なんとなく合わないかなあ?」と思ったら、他の居宅介護支援事業者を訪ねてみるのも良いでしょう。
但し、要介護認定が下りてすぐに施設に入居を希望する方は、直接施設へ申し込みをしてください。地域包括支援センターも居宅介護支援事業者も、在宅での生活を希望する方のみを対象としています。
要支援と要介護では異なる支給限度額
要介護度により、1ヶ月当たりの介護保険サービスの利用限度額(支給限度額)が決まっています。
支給限度額とは、単位数で表されていて介護度により単位数が異なります。
1単位〇円で計算され、1単位数の単価は自治体により詳細は異なりますが、平均的には1単位=10円です。
介護サービスの仕組みは、デイサービスを利用したら何点・そこで入浴したら何点・送迎を利用したら何点というように、利用したサービスの点数を合算した点数に約10円を掛けた分が利用料となります。
利用限度額は、現金で支給されるものではありません。介護保険サービスを受けた際に、利用料から差し引かれる仕組みになっています。
要介護度別・介護保険支給限度額
要介護度別の介護保険支給限度額は下記の通りです。
要介護度 | 単位 | 円 |
---|---|---|
要支援1 | 5,032単位(約50,320円) | 約50,320円 |
要支援2 | 10,531単位(約105,310円) | 約105310円 |
要介護1 | 16,765単位(約167,650円) | 約167,650円 |
要介護2 | 19,705単位(約197,050円) | 約197,050円 |
要介護3 | 27,048単位(約270,480円) | 約270,480円 |
要介護4 | 30,938単位(約309,380円) | 約309,380円 |
要介護5 | 36,217単位(約362,170円) | 約362,170円 |
※1単位の価格は地域によって異なります。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。
利用者はサービスを利用した場合、支給限度限度額の内から利用したサービスの1割(所得により2割~3割)を、自己負担します。
例えば、限度額のすべて利用した場合
要支援1で、1割負担の方の場合、5,032円が自己負担額。
要介護5で、1割負担の方の場合、36,217円が自己負担金額。
表からも分かるように、介護度が高ければ(現場では介護度が重いと言う)使えるサービスは増えますが、支払う金額も増えるということです。
但し、限度額の範囲を超えてサービスを受ける場合、介護保険を利用できなないため、超えた金額の100%を利用者が負担することになります。
また、限度額は1ヶ月ごとに支給されるため、使わなかった分を翌月に繰り越すことはできません。
要支援で利用できる介護予防サービスの内容
要支援の場合は、介護予防サービスが利用できます。自治体が主導している地域密着型介護予防サービスのほか、介護予防・日常生活支援総合事業なども利用することができます。
介護予防サービス
- 介護予防訪問看護
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防居宅療養管理指導
- 介護予防福祉用具貸与(福祉用具レンタル)
- 特定介護予防福祉用具販売(福祉用具購入)など
福祉用具のレンタルと購入に関しては、介護度により対象となる品目が異なりますので、詳細は地域包括支援センターの担当者にご相談ください。
地域密着型介護予防サービス
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 介護予防認知症対応型通所介護(デイサービス) など
地域密着型サービスとは、事業所のある市区町村に住民票のある方が利用できるサービスです。他の市区町村に住民票がある方は利用できません。
介護予防・日常生活支援総合事業
- 訪問型サービス
- 通所型サービス
- その他の生活支援サービス
- 介護予防教室
- 高齢者サロン など
施設への入居
- 認知症対応型共同生活介護※(グループホーム)(要介護2以上の場合が多い)
- 介護付有料老人ホーム(施設により異なります。詳細はお問い合わせください)
- サービス付き高齢者向け住宅(施設により異なります。詳細はお問い合わせください)
グループホームは、地域密着型サービスで市町村に住民票がある方が対象です。入居時に住民票を提出する必要があるため、他の市区町村に住民票がある方は利用できません。
遠くに住む親を、グループホームへ入居させるために住民票を移動するなどし、明らかに入居が目的と判断された場合には、グループホームへの入居ができなくなる場合があります。
親を呼び寄せての入居をご検討の方は、事前に市区町村の窓口にご相談ください。
要介護で利用できる介護サービスの内容
要介護の場合は、介護サービスを利用できます。要支援と大きく異なるところは、在宅介護を支援するサービスだけでなく、特別養護老人ホームなどのサービスを利用することができます。
自宅で利用する居宅サービス
- 訪問介護
- 訪問看護
- 通所介護(デイサービス)
- 短期入所(ショートステイ)
- 福祉用具貸与(福祉用具レンタル)
- 特定福祉用具販売(福祉用具購入)など
福祉用具のレンタルと購入に関しては、介護度により対象となる品目が異なるので、詳細は担当のケアマネジャーにご相談ください。
地域密着型サービス
- 小規模多機能型居宅介護
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
施設への入居
- 特別養護老人ホーム(原則、要介護3以上)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
グループホームは地域密着型のサービスです。利用詳細は要支援と同様となります。
まとめ
要支援は、介護予防サービスを利用することができます。認定結果が出たら、地域包括支援センターへ相談に行きましょう。
要介護は、介護サービスを利用することができます。認定結果が出たら、居宅介護支援事業所へ相談に行きましょう。