本当に特養の「利用料は安い」のか?
特養だから使える利用料の補助金の仕組み

庭で転倒したことがきっかけで3ヶ月の入院生活を送っていた母。頑張ってリハビリはしたものの車いすの生活に。

入院中に要介護認定は出たけれど、このままでは家には戻れそうにもない様子。

病院のソーシャルワーカーさんも、認定の手続きをしてくれたケアマネジャーさんも「ホームに入居されたほうが安心ですね」って言うから、ネットでいろいろ検索したけど…

もう! 何が何だか分からないわ!
おまけに母は「私をホームに入居させる気かあ~」って怒ってるし…

外科病棟の一室からは、こんな声が聞こえてきそうです。

まずは、簡単に老人ホームの種類を知りましょう

在宅での介護が難しい場合には老人ホーム探しから始めます。しかし、ひと口に老人ホームといってもその種類は様々です。

入居の目的や受けられるサービス内容が異なっていたりと、介護初心者にはとてもわかりにくいので種類別に説明します。

老人ホームの種類

対象者 認知症の受入れ 1か月の費用(目安)
特別養護老人ホーム(特養)
在宅での生活が困難になった要介護の高齢者が入居できる公的な「介護保険施設」の一つ。
1か月の利用料が比較的安価な多床室は待機者が多い
要介護3以上 約5万円~17万円
(所得により居住費と食費の減免有)
老人保健施設(老健)
在宅復帰のためのリハビリ中心の施設。
医師の指導の下PT/OT/STなどの専門職からのリハビリが受けられる。
入居期間は原則3か月
要介護1以上 約8万円~17万円
(所得により居住費と食費の減免有)
介護療養型医療施設(介護医療院)
長期療養を必要とする要介護者に対し、必要な医療や介護等を提供する施設。
2024年3月末で廃止予定。順次介護医療院へ移行予定。
要支援1以上 約8万円~17万円
(所得により居住費と食費の減免有)
介護付有料老人ホーム
都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている。
住居と介護、生活支援が一体になった施設。
24時間体制で必要な介護をホームスタッフから受けられる。
要支援1以上
(施設により異なる)
約10万円~40万円以上
サービス付高齢者向け住宅(サ高住)
住宅と生活支援が一体になった施設。
介護サービスは外部の事業者と契約して利用する。
自立~要介護
(施設により異なる)
施設により異なる 約10万円~25万円以上
(別途介護費)
住宅型有料老人ホーム
住居と生活支援が一体になった施設。
介護サービスは外部の事業者と契約して利用する。
自立~要介護
(施設により異なる)
施設により異なる 約10万円~25万円以上
(別途介護費)
グループホーム
認知症の方が最大9人で料理や掃除など日常生活を介護スタッフと共同でする施設。
施設のある市区町村に住民票がある人が対象
要支援2以上 約13万円~20万円
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特養と介護付き有料老人ホームの違い 前回の「老人ホームの種類」では特別養護老人ホーム(特養)のお話しを少しおさらいをしましょう。 [sitecard subtitle=関連記事 url= https://benri-box.com/[…]

この表だけ見たところで「あ!そうなのね」と理解できた方は素晴らしいです。

なにが何なのか?分からない方がほとんどだと思います。
ざっくりとでも理解ができていたら「有料老人ホーム紹介センター」のような事業は成立しないはずです。

参考までに有料老人ホーム紹介センターとは、入居を希望する本人や家族に代わって有料老人ホームを探してくれる会社のことです。

入居を検討されている方の身体状況や希望する金額や場所を伺い、ホーム提案から現地案内まで無料で行ってくれます。

ここでは多くの方が有料老人ホーム=特別養護老人ホーム(特養)と思っているであろう特養についてご説明いたします。

特養は地方自治体や社会福祉法人が運営する
公的な老人ホーム

特別養護老人ホームは、地方自治体や社会福祉法人が運営する公的な老人ホームで、一般的には「特養」と呼ばれています。

介護保険法では「介護老人福祉施設」と呼ばれ、原則として「要介護3以上」の方が入居できる介護施設です。

利用料は年収によって5段階に分けられていて民間の有料老人ホームと比較すると、費用が安いことも特徴です。

ですが!!
2000年以降に開設したユニット型(個室・洗面台付)の特養の利用料は「安い!」といっても、多床室や従来型個室の利用料と比較すると割高です。

年収(年金支給額等)で決まる、1ヶ月の利用料

「特養は安いから」という声を良く聞きますが、それは年収によって負担限度額制度というものがあり、年収の少ない人は居住費(部屋代)と食費の「補足給付」を介護保険から受けることができるからです。

負担限度額は、5段階に分けられていて基準となる要件は、

年間の収入:年金収入等=公的年金等収入金額(非課税年金を含みます)+その他の合計所得金額
預貯金額の合計

この2つの条件から、第1段階~第4段階を設定しています。

年金収入等 預貯金等の資産状況
第1段階 老齢福祉年金受給者
生活保護受給者
単身1,000万円以下
夫婦2,000万円以下
第2段階 世帯全員が住民税非課税で80万円以下 単身650万円
夫婦1,650万円
第3段階① 世帯全員が住民税非課税で
80万円超120万円以下
単身550万円
夫婦1,550万円
第3段階② 世帯全員が住民税非課税で
120万円超
単身500万円
夫婦1,500万円
第4段階 上記以外の人

<※年金収入等=公的年金等収入金額(非課税年金を含む)+その他の合計所得金額

表の要件を満たした人が負担限度額制度を利用して補足給付を受けることができます。

簡単に言うと「要件を満たしている人は特養に安く入居できる」ということです。

表からも解かるように、要件を満たすことができる人は年金等の年収が約155万円以下の「住民税非課税世帯」の方で、プラス各段階によって預貯金の額も満たしている方になります。

そうです!特養に安く入所できる方は「住民税非課税世帯」の方だけとなります。

残念ながら住民税課税世帯に方は、特養の補足給付を受けられる条件から外れます。つまり施設が決めた1ヶ月の利用料を支払うことになります。

ユニット型特養(新型特養)の利用料はそんなに安くない

では実際に、ユニット型特養に入所した場合の1ヶ月の利用料を見てみましょう(埼玉県にある特養の一例)。

ユニット型特養 補足給付対象者の1ヶ月利用料一例
【ユニット型個室:要介護3、第3段階②、1割負担者 (30日換算)】
基本サービスご利用料金+加算項目+食費+居住費+その他の費用=118,980円
【ユニット型特養 補足給付対象の1ヶ月利用料一例】
ユニット型個室:要介護3、第4段階、1割負担者(30日換算)
基本サービスご利用料金+加算項目+食費+居住費+その他の費用=154,950円

となりますが、これに医療費や薬代、理美容代などが必要になるためどちらの場合も、プラス1万~2万ほどはかかると思っていた方が良いでしょう。

この金額を見てどう思いますか?
考えていた金額よりも「高いわ!」と思われる方も多いのではないでしょうか?

民間が運営する介護付有料老人ホームに比べれば、比較的安価ですがよ~く考えてみてください。

第3段階②に該当する年金収入額を120万円の場合、1ヶ月の年金額は約100,000円です。まったく預貯金もなく援助してくれる家族がいなければ利用料を支払うことができません

多くの方が「特養は利用料が安いから~」と思っているようですがユニット型の特養はそんなに安くないのです。

安い!のは多床室の特養

え~、もっと安い特養はないの?」という声が聞こえてきましたので、

あります!

従来型特養と呼ばれる特養にある「多床室」というタイプであれば、ユニット型より安い利用料で入所できます。

「多床室」とは、少し乱暴な言い方になりますが「病院の大部屋」みたいなものです。

個室ではなく、1つのスペースに4人~6人(施設により異なる)が一緒に生活します。仕切りはカーテンです。もちろん、洗面場所ありません。

ね!病院の大部屋でしょ。

個室ではないので、居住費が安いため、1ヶ月の利用料が安くなっているという仕組みです。

では、多床室の特養に入所した場合の1ヶ月の利用料を見てみましょう(埼玉県にある特養の一例)。

【多床室特養 補足給付対象者の1ヶ月利用料一例】
多床室:要介護3、第3段階②、1割負担者(30日換算)「補足給付対象者」
基本サービスご利用料金+加算項目+食費+居住費+その他の費用=86,946円
【多床室 補足給付対象者の1ヶ月利用料一例】
多床室:要介護3、第4段階、1割負担者(30日換算)「補足給付対象外」
基本サービスご利用料金+加算項目+食費+居住費+その他の費用=108,176円

ユニット型特養の利用料と比較すると安い利用料で入居できます。

この利用料にユニット型と同様に、医療費や薬代、理美容代などが必要になるためどちらの場合も、プラス1万~2万ほどはかかると思っていた方が良いでしょう。

負担限度額の認定申請の方法

ここで、負担限度額の認定申請方法について簡単にご説明をします。

その前に、おさらい!

介護保険負担限度額の申請をして補足給付の対象となる方の条件
世帯全員(別世帯の配偶者を含む)が市町村住民税非課税の場合
※市町村住民税課税の場合は、対象となりませんのでご注意ください。
介護保険負担限度額の申請をして補足給付の対象となる介護保険のサービス
介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など)への入所・短期入所(ショートステイ)の居住費・食費
※民間企業が運営する「介護付有料老人ホーム」「短期入所(ショートステイ)は、介護保険負担限度額の申請をしても補足給付は受けられません。

※手続きは住民票のある介護保険課などの窓口となります。申請に必要な書類は以下の通りになります。

  1. 申請書兼同意書(署名又は記名押印)。自治体のホームページからダウンロードができます。
    ※成年後見人の方が申請される場合は登記事項証明の写しを添付
  2. 資産を確認するための書類
    ・預貯金の通帳等(普通・定期・積立等すべての口座残高が対象)の写し
    ・投資信託・有価証券等がある場合は証券会社や銀行の口座残高の写し
    ・銀行名・支店名・預金種別・口座番号・口座名義人が分かるページ
    ・普通預金の口座残高が分かるページ(提出日より2ヶ月以内に記帳されたもの)
    ・年金振込口座の場合は直近の年金振込が記帳されたページ
    ・定期預金・定期積金のページ(預金残高の有無にかかわらず、添付が必要)
  3. 配偶者についても添付が必要です。
  4. 本人の個人番号(マイナンバー)を確認できる書類(個人番号カード等)
  5. 本人(又は代理人)の本人確認書類等(免許証や障害者手帳等の顔写真入りのものは1点、介護保険証、負担割合証、医療保険証等の顔写真の無いものは2点準備)
  6. 代理人の方は、委任状又は本人に発行された保険証や認定証等を持参
【資産に含まれる預貯金等の種類】
・預貯金(普通・定期)
・有価証券(株式・国債・地方債・社債など)
・金・銀(積立購入を含む)など
※購入先の口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属
・投資信託
・タンス預金(現金)
【預貯金等に含まれないもの】
・土地、家屋、生命保険
・自動車、腕時計宝石など
・時価評価額の把握が難しい貴金属などや絵画、骨董品、家財など

借入金や住宅ローンなどの負債がある場合には、預貯金等から差し引いて計算してくれますので、必ず借用証書などの写しを持参しましょう。

なお、この制度の適用の期間は、8月1日から翌年7月31日までの1年間です。適用期間ごとに申請が必要になります。つまり、毎年更新の手続きが必要になります。

また、虚偽の申告をして不正に補足支給を受けた場合は、介護保険法第22条第1項の規定に基づき、それまでに受けた給付額に加え最大2倍の加算金(給付額と併せ最大3倍の額)を納付していただく場合がありますので、正しく申告をしてください。

特養待ち!○○万人の多くは多床室待ち

「特養は満室で入居できない」と思われている方も多いと思いますが、待機者の多くは、利用料の安い「多床室」の空を待っている方が多いようです。

東京都内は特養の数が少ないためユニット型特養も満室ですが、神奈川県や千葉県、埼玉県の郊外にある特養では空室も目立ちます。

郊外の特養に入居しながら、都内の特養の空を待つのも一つの選択肢ではないでしょうか?

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