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高齢者の孤独死問題と特殊清掃について

孤独死という言葉を耳にした事はありますか?

孤独死というものに定義はありませんが、ご自宅にてお一人で亡くなられているのが孤独死と言われています。

孤独死の多くは高齢者です。高齢化が進む中で、孤独死は社会問題になりつつあります。

そして、発見された後は部屋を片付ける必要がありますが、この誰しもが躊躇する作業をやるのが特殊清掃員です。

この記事では、孤独死の原因とその後の特殊清掃について事例を交えて書いていきます。

目次

高齢化社会における孤独死の原因

今の高齢者が若者だった頃は、家族というものは3世代が当たり前だったのではないでしょうか。

段々と核家族化が進み、都心部への人口集中が加速していく中で、親子でも遠い場所で暮らすようになりました。

年に数回だけ顔を合わせていた家族とも、新型コロナウイルスの流行をきっかけに全くお互いを行き来できなくなってしまった時期もあったと思います。

これらにより、一人暮らしの高齢者が増えたことが孤独死の原因の一つとも言われています。

社会から孤立することで孤独死につながる高齢者

孤独死で亡くなる方は、死後数か月間も発見されないことが多く、その現場は部屋中に物が散乱している事が多いです。

これは長い間、殆ど人と接点を持った生活をしておらず、もしくは自ら閉じこもった生活を選んだ結果だと思います。

一人暮らしで、社会と接点を持つには、仕事をする事や地域のコミュニティーに参加すること、友人や近所との付き合いや常連の店での会話など沢山ありますが、高齢者には段々とこの接点を持つことが難しくなります。

体の衰え

体を動かすのが億劫になってくると、外へ出る気力もなくなります。動作も緩慢になり、ゆっくりと動くことが周りの迷惑になるのではと考える事もあるでしょう。

友人・知人と疎遠

長い付き合いの友人でも、どちらかが体を悪くしたりすると遠慮がちになり、連絡を取り合う事をしなくなってしまいます。

年齢の近い人では亡くなってしまい、会える友人もいなくなり、その悲しみから新しくコミュニティーを作る気力もなくなってしまいます。

高齢者は、とても孤立しやすい状況にあることは、社会的に認知して孤立しないために行動していかないといけない問題だと思います。

孤独死の精神的な問題と経済的な問題

孤独死は社会的問題ですが、一人暮らしをしているご老人が全員、危険というわけではありません。

社会と関りを持って、趣味やお稽古を楽しんでいる高齢者も沢山いらっしゃいますが、それでも自宅でお一人で死を迎えてしまう方もいます。

孤独死の何が問題とされるのかを考えていきたいと思います。

孤独死の精神的な問題

人が亡くなる事はとても悲しい事です。それも、ご家族ご友人身近な方が亡くなった時には深い悲しみを感じます。

その方が、生前されていたことや、共に過ごした時間、楽しかった思い出もこれから先には更新されることはありません。

そんな悲しみの中で、故人と最後に話したことは何だろう?故人は最後どんな事を思っていたのだろう?そう考えたとき、最期の時がお一人であった事を知ったご家族ご友人はどう思われるでしょうか。

きっと、「寂しかっただろう」「一緒にいてあげたかった」と無念の思いに駆られると思います。

それはきっと亡くなられたご本人も同じで、「なぜ、どうして自分が一人で死んでいくのだ」と無念の気持ちでこの世を去らなくてはいけないかもしれません。

孤独死で亡くなられた後も、発見が遅くなればなるほどにこの無念の気持ちは、残された人達の心に深く傷を作ってしまうかもしれません。

孤独死の経済的問題

看取られて亡くなった後でも、孤独死で亡くなられた後でも、死後の処理は必要です。

ここでは、金銭的な側面で看取りでの死と孤独死を比べていきたいと思います。

看取られて亡くなった後は、病院や施設や葬儀屋がエンゼルケアといって、ご遺体をきれいにする作業をしてくれます。

病院では、エンゼルケアに5千円~2万円かかる場合があります。

エンゼルケアは医療行為ではないので保険適用外なのと、病院ごとにどこまでのケアをするのかが変わってくるので、金額の幅が広くあります。

同じように老人ホームなどの介護施設でも金額に幅があり、数千円~6万円程度が相場ですが、高級老人ホームと言われるような有料老人ホームでは10万円単位のところもあるようです。

葬儀屋は、エンゼルケアの後、葬儀までの間にご遺体の腐敗が進まないように使用するドライアイスやお線香、仏具の貸し出しでご料金が発生します。

相場は3千円~10万円ほどでこちらも葬儀の規模と葬儀屋によって変わってきます。

さて、孤独死の場合はというと、まずご遺体の運び出しをして部屋の清掃をします。

部屋の状況やどこでどのような状態で亡くなっているかによってお値段はかなり変わってきます。

最低でもワンルームの部屋を掃除するのに25万円はかかります。

これは、単純に掃除というだけなので、残置物の撤去や貴重品の仕分けなどの作業費は入っていません。

さらに、集合住宅などの場合はご遺体からの体液で腐敗が進むと、階下の部屋まで汚染されることがありますので、作業費は跳ね上がり100万円を超える金額にもなりえます。

そして、清掃の後は必ずリフォームも必要です。掃除をしたからといってすぐに住めるものではありません。孤独死の腐敗臭は、掃除だけでは取り除くことは難しいのです。

この費用を誰が負担するのかという問題も考えなくてはなりません。

特殊清掃の事例と孤独死の現場

散乱した部屋の中に、腐敗臭が充満し部屋に入る事も躊躇されるのが孤独死の特殊清掃の現場です。

喚起の為に窓を開けると、マンション全体が異臭に包まれるほどの臭いの中、作業が始まります。

マンションの住人から、異臭がすると管理人に訴えがあり、そういえばいつも顔を合わせて挨拶する住人の顔をしばらく見ていないと思い、現場の部屋を訪室すると既に亡くなっている家主を発見したそうです。

住人は76歳の男性でした。

台所の水道は蛇口が折れていて使えない状況で、テーブルにはお惣菜の食べ残しや飲み残したペットボトルが腐敗して散乱していました。

住人の男性が倒れていた場所には、人型に跡がついてウジ虫が体液にわいています。

積みあがった衣類や紙など、部屋を片付けていくと段々と住人の背景が見えてきます。

住人の男性は、個人タクシーをやっていたようで腰を悪くして仕事を退職したようです。

エアコンもない部屋でしたので、寒さと暑さを外の公共施設などでしのぎながら生活していたのではないかと推測されました。

水道が使えなくても気にしない、物が積みあがって崩れていても気にならない。自分の身の回りのことをすることを辞めてしまった、セルフネグレクトの状態だったのではないでしょうか。

そんな散乱した部屋の中に立派な仏壇がありました。そこには奥様の遺影と遺骨があり、大事にしていたのが分かりました。
積みあがった荷物の中から写真や貴重品が見つかるたびに、奥様との思い出が見えてきます。

きれいなウェディングドレスを着た人形は、男性が亡くなっていた場所から見える位置にありました。
亡くなっていた場所の頭の付近には、きれいな小物入れのオルゴールもあり、蓋を開けると静かに音楽が鳴りだしました。
亡くなる直前にネジを巻き聞いていたのでしょう。奥様と一緒に選んだ品なのかもしれません。
散乱した部屋の中で、男性が最後に見て聞いていたものは先に亡くなった奥様との思い出だったのでしょう。

奥様と死別して大きな悲しみの中、生きる気力もなくなり、世間とかかわることも辞めて自分ひとりの世界で生きてきた男性は、人生の最後を孤独死といわれる状態で発見されました。

特殊清掃の作業

こちらの事例の特殊清掃の作業は、次のとおりです。

消毒

ご遺体の腐敗臭が充満していたので、消毒をして一度落ち着かせます。それでも鼻につく臭いはすべてなくなることはありません。

分別作業

物が散乱している状態だったので、権利書など重要な書類を探し出すことが困難でした。ゴミの分別と同時に、貴重品なども分けて整理していきます。

不用品の運び出し

家具や家電、汚染された畳などを運び出しをします。この時、エレベーターを使うとエレベーター内にも臭いが染みついてしまうので、すべて階段での運び出しになります。

消毒

再度、室内を消毒しますが、それでも腐敗臭はなくなることはありません。以上の作業で、費用は約80万円ほどかかっています。

特殊清掃の問題

特殊清掃の問題の一つは、費用の請求です。

故人や親族に請求出来れば問題ありませんが、多くの場合はお一人で身寄りのない方なので、その部屋の不動産屋が持つことになるそうです。

次に、お骨です。

身寄りのない方のお葬式や死後処理は地方自治体が代行することがあります。

お骨も市区町村の合同墓地に埋葬される場合もありますが、昨今あまりに数が増えているため、最終的に住んでいた不動産屋などに回ってくるケースもあったそうです。

「年を取っても人に迷惑をかける生き方はしたくない」という言葉をよく聞きますが、ご自分の死後は必ず誰かの手を借りる必要があります。

死後のことについてしっかりと手続きをされておかないと、たくさんの人の手を借りることになり、迷惑をかけることになるかもしれません。

まとめ

私が小さい頃は、近所の公園で知らないおじいちゃんやおばあちゃんがよく話しかけてくれました。

仲良くなって、自宅まで遊びに行ったこともあります。

昨今では、そういった交流も少なくなり、事件性を疑われ危険視されることもあります。

孤独死は孤立が原因と言われていますが、孤立を防ぐには元気なうちから沢山のコミュニティーを作っておく事が必要なのではないでしょうか。

地域で、年代を超えて触れ合える機会があることで、孤独死を減らす事ができるのではないのかと考えます。

もし今、孤立してしまっている高齢者が身近にいるようであれば、地域包括支援センターへ相談してみてください。

きっと、おせっかいと思われる事もあるかもしれませんが、人と関りを持つのはそれ位が丁度良いのかもしれません。

こちら、株式会社開祥の上東様の作られた動画です。実際の現場作業をドキュメンタリーにしてあります。

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この記事を書いた人

シニアが安心して暮らせるための情報や、専門家の方へのインタビュー等のお役立ち情報を分かりやすく発信してまいります。

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