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理解できない?親が認知症になったらどうなる?

目次

親の認知症を理解するために

認知症の介護はとにかく大変なイメージではないでしょうか?介護現場で認知症の方と接して思うことは、その方をより深く知ることが一番大切だということです。

しかし、いざ自分の親を介護すると、困った行動や人が変わったような言い方に戸惑うことが多いと思います。

この記事では、認知症で理解しておきたいこととその対処法を、事例を交えて書いていきます。

認知症とはどんな病気なのかを知り理解を深める

アルツハイマー型認知症

認知症の中で、一番多いのがアルツハイマー型認知症です。
初期の症状は物忘れで、段々と「行動そのものを覚えていない」ようになります。

最近の記憶から無くなっていき、昔の事は良く覚えています。
感情のコントロールをする事が難しくなる事もあります。

昼夜逆転なども困った症状の一つです。

レビー小体型認知症

認知症の中でもレビー小体型認知症の割合は少ないです。
幻覚や幻視、妄想など、ありもしないことをとてもリアルに話すようになります。

身体にも症状が出ると手足の震え、こわばりなど、歩行時に転倒しやすくなるため注意が必要です。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血等の脳血管障害によって脳の血液の流れが阻害され、脳の一部が壊死することで発症します。
他の認知症とは違い、生活習慣を見直すなど脳梗塞などを発症させない様にする事で認知症の予防ができます。

脳のどこに障害が出るかによって、発症した時の症状も変わってきます。

歩行障害、手足のしびれ、麻痺、排尿障害、言葉が出にくい、意欲低下、不眠、感情のコントロールがきかない等の症状があり、脳の血液の流れが再度阻害されると段階的に症状が重くなってきます。

前頭側頭型認知症

50代~60代と比較的若い時に発症しやすいのが前頭側頭型認知症です。

症状は性格が極端に変わり、万引きや悪ふざけなどの反社会的な行動が増え、柔軟な思考ができなくなり、身だしなみに無頓着になるなどの衛生管理ができなくなります。

同じパターンの言動や行動を繰り返したり、時間に固執してスケジュール通りに行動しないと気が済まないという特徴もあります。

他の認知症に比べ、一番人が変わったように感じると思います。

認知症の症状を知り理解を深める

会話

同じことを繰り返し話すことが多いです。少し前の事を忘れてしまうために、何度も何度も同じ話を繰り返してしまうのです。

これは、「その話は前も聞いたよ。」と飲み屋で話す程度のレベルではなく、食事を前に「昔は食べる物が無くて」という言葉を食べ終わり下膳するまで繰り返し続けるといった感じです。

その話に付き合い、寄り添うのが理想の認知症介護ですが、毎日毎日、食事のたびにその話以外しなくなると、いくら親でも話をする気が無くなってきてしまうのではないでしょうか。

介護者の精神的負担になる症状でしょう。

心理

認知症が進むと、病気と向き合い自分の感情は病気のせいだからとコントロールすることは難しいです。

数秒前の事はすぐ忘れてしまい、昔の事はよく覚えているので、自分の現状も理解することが難しく新しい環境にも対応できません。

その心の中は、不安と混乱で一杯になります。

幻覚や幻視、妄想も症状にあれば、その全てがご本人にとって現実です。

それを理解されない怖さも介護者は理解しなくてはいけません。

認知症になっても、心はとても素直な方が多いです。

寄り添ってくれる方を求めて不安の中で戦っています。

行動

認知症の方の行動は、問題行動と言われてしまうことがあります。たしかに徘徊や暴言・暴力、不潔行為、異食等は命に係わる他人に迷惑を掛ける行動になり得ます。

この行動を抑制しようとすると当然ながら抵抗をされますが、子供とは違い体も大きな高齢者の場合ですと、介護者にも負担の大きなことです。

しかし、行動には必ず理由があります。

行動を抑制せざるを得ないこともありますが、問題行動の理由を見つけて解決していくことも介護の大切な部分です。

認知症の介護は寄り添い理解すること

認知症の方の心は不安と混乱で一杯です。そんな心から出てくる行動は、意味不明な事ばかりだと思いますが、この心に寄り添うことでより認知症を理解することができます。

認知症の行動への理解と対応事例

認知症の対応については、専門的な手法として名前が付いているものがありますが、全てがその手法でうまくいくわけではありません。十人十色とはまさにその通りで、認知症ケアも人それぞれです。

次の事例は、その時その方には正解だった対応です。参考程度として読んでください。

徘徊

【事例】
Iさん(88歳女性)はアルツハイマー型認知症で、少しでもご主人と離れてしまうとご主人の名前を呼びながら探し回り家の外まで行ってしまいます。

ご主人は片時も休まる時間が無く、困った末に有料老人ホームへ二人で入居されました。

別々の階で離れて生活をする事で、ご主人は自分の時間を持つ事ができ、外出も楽しめるようになりました。
しかし、Iさんは自宅に居た頃よりも徘徊が多くなりました。

廊下を何往復もしながらご主人の名前を呼び歩き続け、ドアや窓を開けようと叩いたりする様になりました。

スタッフは、Iさんの根本的なお気持ちを知ろうと話しかけました。

「Iさんこんにちは。」
「こんにちは。ねぇ、主人がどこにいるか知らない?」

Iさんの目は焦点があっていないように不安で震えていたのでスタッフは腰を屈めてIさんと目線を合わせ、聞きました。

「ご主人のお名前は何ですか?」
「A男。A男よ。A男。」

「A男さん。とても素敵なお名前ですね。どうしてA男さんを探されているのですか?」
「だって、居ないとしょうがないじゃない。」

ここで具体的な話が出てこないので、どうしたいのかを聞きます。

「A男さんに会ったら何をしたいですか?」
「なんでもよ。とにかくいないとだめなの。」

興奮は治まりません。

「A男さんがIさんに何かしてくれるのですか?」
「違うわよ。私がしないとダメなの。出かける準備もご飯も全部。あの人だけじゃダメなの。」

Iさんは早口で言いましたが、スタッフの目を見て答えてくれました。
Iさんは、若いころからとにかく忙しく働いていたご主人を支えてきていました。時にはビジネスシーンでも付き添っていたそうです。

スタッフはこの言葉から、Iさんは認めてもらいたのだと推測しました。

「Iさんは素晴らしい妻ですね。ご主人の事全部やっているなんて。」
「そうなの。あの人の事は私が全部やっているから。」

少し落ち着いたところで、昔のことを思い出してもらいます。

「A男さんのことで一番大変な事は何ですか?」
「やっぱり仕事ね。私が運転手で連れて行くの。」

「Iさん運転できるなんてすごいですね。」
「得意よ~。」

やっと笑顔を見せてくれたIさんにスタッフは詳しく聞かせてくださいとお茶にお誘いしました。

認知症は意味もなく徘徊しているように見えますが、しっかりと目的があります。

何かをする事だったり、何かしてほしいことがあったり、その何かが何なのかを知るために、その方の背景を知り、信頼して話してもらえるように言葉を選んでいく必要があります。

Iさんの場合は、ご主人を探すことが目的のように感じられましたが、実はご主人の世話をする自分に一番自信を持っていて、認めてもらいたくてご主人を探していたのでした。

攻撃的な言葉や行動

【事例】
Kさん(84歳男性)は建築関係の職人で昔から体を動かす事が好きでした。認知症の症状が出る前から通っていたデイサービスでは、体操を気に入られ元気に運動をされていました。

しかし、認知症の症状が重くなってくると体操の順番も分からなくなり、スタッフの真似をするのも難しくなってきました。

持っている体操の道具もただ持っているだけで、体操のカウントだけを繰り返し呟いているような状態の時もありました。

そんな時、新人のスタッフが、次の体操をするため席の移動をKさんにお願いしました。

「Kさん、あっちの椅子へ移動してください。」
「いやだよ。」

いつもなら何も言わずに動いてくれるのに、新人スタッフは戸惑います。

「動いてくれないと、次の体操できないですよ。」
「別にいいだろ。」

「みんな困ります。」
「誰が困るんだ。何もしてねぇだろ!」

だんだんとKさんの語尾が強くなっていくのを感じた他のスタッフが、対応を変わろうとした時、Kさんのこぶしが振りあがりました。

「俺が悪いのかよ!」

周りのご利用者様もびっくりした表情で、その場が静かになりました。対応を変わったスタッフはKさんに話しかけながら、新人スタッフを遠ざけました。

「Kさんごめんなさい。説明が足りませんでした。」
「なんなんだあいつは。」

「そうですね。すいませんが、手を下ろしてもらえますか。」

スタッフはそっと拳に触れ、両手でKさんの手を包むようにゆっくり膝の上におろしていきました。

「急にどけって何なんだ。」
「そうですね。急でしたね。急に言われても困りますよね。」

「そうだよ。俺は邪魔者か?」
「いいえ。ここの体操の仲間ですよ。今日の体操はどうでしたか?」

「体操もよくわかんねぇよ。」
「そうですよね。わかりづらいですよね。Kさんは運動がお好きと聞いたのですが、何かスポーツをやっていたのですか?」

「野球」
「手が大きいから、ボールを持つのが得意そうですよね。」

スタッフは、そっとこぶしを握ったままのKさんの手を開きます。

「そんなこともねぇだろ」
「私の手より大きいです。」

スタッフは、Kさんの掌と自分のを重ねて見せます。

「そりゃ男だもんよ。」
「この大きな手を使って、次の体操もチャレンジしてみませんか。私も隣で一緒にやりますから。」

「一緒にやんのか。いいよ。」
「それでは、席の移動をお願いします。」

この時スタッフは、Kさんが一つ前の体操から動きについていけなかった事に気付いています。しかし、Kさんの自尊心を守るために体操ができなっかたとは伝えません。

そのうえで、もう一度チャレンジできるように促す言葉と、気持ちが落ち着くように身体に触れて対応しました。

入浴拒否

【事例】
Eさん(女性80歳)は、一人暮らしをしていましたが、認知症になり娘家族の家で一緒に住み始めました。

なるべくEさんが一人になる時間を作らないように、デイサービスなどを利用しながら暮らしていましたが、家での入浴には強い拒否がありました。

娘はなんとか入浴をさせようと、お風呂掃除を一緒にしたり、入浴剤を一緒に選んだり、洗ってあげるからと一緒に入ろうとしたりしましたが、「そんなことはしなくていい」の一点張りで困ってしまっていました。

そんな話をデイサービスの職員にすると、「デイでも最初は拒否がありましたけど、よく話を聞くと家以外でお風呂をもらうことはすごく申し訳ない事だと思っていたみたいです。今は銭湯に来たつもりで、料金ももらっていますから。と説明していますよ。」と教えてもらいました。

娘は、昔からEさんが言っていた「よそ様に迷惑をかけるんじゃない」という言葉を思い出しました。

娘家族の家を自分の家と認識できていなかったEさんは、娘がお風呂を勧めるのにたいして、人の家で勝手なことをするんじゃないと怒っていたようでした。

それからは、自宅でも家主にお風呂代を払っているからと説明して入ることができるようになりました。

Eさんは娘の家に引っ越しましたが、環境の変化を理解できておらず、自分の居場所と思っていませんでした。

娘は自分が居る家なのに、Eさんが他人の家だと思っているとは全く想像できなかったのです。自分の親が認知症になると、その言動は意味不明に感じることがあると思いますが、認知症の方の言っていることの中には必ず理由があります。

その方がどういう性格で何を大切にしてきていたのかを考えてみてください。

ご家族のあなたが一番、その意味不明な言動の答えを見つけられることができると思います。

まとめ

介護のスタッフは、認知症の人の相手ができて凄いと言われたことがあります。もちろん嬉しい言葉ですが、それは専門的に勉強をしてきたから認知症について理解しているからです。

それでも、認知症ケアの経験が少ないとご利用者様と口論になってしまったり、行動を抑制して余計にご利用者様が混乱してしまう事がありました。

認知症ケアの一番大切な事は、その方の心に寄り添うことです。そうは言っても人と人なので、理解できないとついイライラしてしまうと思います。

憎むべきは認知症という病気ですが、目の前の状況が解決できないと矛先はご自分の親に向いてしまうこともあるでしょう。しかし心に寄り添うことは、専門的に勉強することではありません。

ご自分のお母様やお父様が過ごしてきた人生を一番そばで見てきて知っていて、一番理解できるのはご家族です。

介護スタッフは、その背景をご家族から教えて頂く事で仕事ができています。

家族だから余計にイライラしたり、理解できない部分もあると思います。でも、家族だからこうしてあげたいという気持ちが一番優しい形で表れるのだと思います。

最後に介護スタッフが聞いた、認知症のご利用者様の本音をお伝えします。80代の女性の言葉ですが、ご本人は40歳代ご子息が自立し始めた頃の記憶が強い方でした。

子供には私のせいで苦労させちゃったのよ。
小さい頃はよく怒っちゃって、本当の事を言えない様にしちゃったのよね。

もっと素直に甘えさせてあげれば良かったわ。
その頃はそんな余裕無かったんだけど子育てって大変よ。

私がお婆ちゃんになったら仕返しされちゃいそう。
それでも良いけどね。

年に何回か顔を見せてくれれば嬉しいし、“おじさん”になってもぎゅって抱きしめてあげたい。」

この言葉を聞いて、すごく愛情のあるお母様だったのだと思いました。

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この記事を書いた人

シニアが安心して暮らせるための情報や、専門家の方へのインタビュー等のお役立ち情報を分かりやすく発信してまいります。

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